映画「羊の木」覚書と感想

錦戸亮主演、映画「羊の木」を観ました。

以下ネタバレ感想です。


映画羊の木、とにかく雰囲気が暗い。
率直な感想として、まず暗い。
もうずっと曇り。劇中晴れていようとも、なお曇りであるかのように感じるくらいには全編通してずっとどんよりした雰囲気。
しかしこれが「過疎化した地方の町」をよく表現している。さびれた港町。その煽り文に一切の偽りは無い。
また、こういった雰囲気は監督の色がよく出ているような気もしたりしなかったり。(本当によく分かってない)
そしてこの映画は、思ってた以上に明るく笑えたり観たあとにスッキリするような、そんな簡単な映画ではなかった。


と、前置きしてみたけれど、とりあえず観た感想第二弾としては、

「観てよかった!!!!」

この一言に尽きる。

これは本当に観てよかった!!!!!
ちなみに一人で観て良かったと思ったし、監督並びに錦戸亮ちゃんたちはお誘い合わせの上と仰ってはいたが、私はこれは一人で観に行くべき映画だなと思った。
(人によるからそこは各々調整した方がいい)



いろいろ感想は言いたいんだけど、まず言いたいい!!!
あのね!!
俳優陣が超絶スーパー色っぽい!!!!

個性的な俳優陣とそのキャラクターがとっても良かった!
そう、だから、取り敢えずその俳優陣とキャラクターにフォーカスを当てながらつらつら書いていこうと思う。



①まず優香!!
優香めちゃくちゃエロかった!!!
すごい、これはほんとに口から「エロ……」って思わず出ちゃいそうなくらいエロかった!!!
単純な女の色気だけじゃない。
序盤からまあ月末が優香のおっぱい凝視してしまうくらいの豊満さもあるけどそうじゃなくて!
月末パパの歯ブラシを手伝う時のおっぱいから行くところとか、口の端に付いたお米をとって食べちゃうところとか(カメラも舐めて撮っててずるかった)。
そこも本当に充分エロくてドキドキしたんだけど、ただエロいんじゃなくて、すごくしっとりとした女の色気が、色っぽさがすごく魅力的だった。生きてきて優香を見て初めてエロいなと思った。

「旦那を首絞めセックスで誤って殺してしまった」「女子刑務所の話」「好きな人と死ぬまで一緒にいたい」
こういった情報が加味されていく度に優香の魅力が倍増しになっていき、さらに艶っぽく色っぽく見えた。
特に首絞めセックスの行は、それで人を殺めてしまったという危うさと、月末に「死ぬまで人を好きになってはいけないのか」と問う真剣な眼差しが、どうしようもなく色っぽくて、思わず息を飲んだ。
しかし当事者の月末はそれどころではない。
なぜなら「故意では無いと言っているが、結果的に殺人犯」になってしまった人間が身内になるかもしれない状況だからだ。
経緯がどうあれ、人は殺してしまっている。
そんな人物に、そういったことを問われて、果たして自分ならどう返すだろうか。
月末は何も答えなかった。
きっと私も、すぐに答えは出せない。
なぜなら、信じてくださいと言われても、だってもう既に信じていないし、信じられるわけがないから。
しかし月末パパは優香から殺人の話を聞いても、それでも気持ちは揺らがなかった。
その意思を聞いた月末は、それなら、ということであとは当事者間に任せた。まあここまで来るといくら息子であろうとももう大人だし、介入しようとも思わない気持ちもわかる。

そして結果的に優香は魚深で生きていく希望が掴めた。
どうか今度は平穏に暮らしてほしいと思う。
こう思ってる時点で、今は優香の言ったことを「信じている」私がいる。裁判では信じてもらえなかったことを、何も見ていないのにね。

優香エロいの話から逸れたけど優香はエロい。
錦戸亮ちゃんがお昼の番組でAVやんと言ってしまった理由、観たらわかる(ほんまか?)。
絶対見て欲しい。

あと、月末宅で月末パパとのろろ様が来るから部屋に入ろうねの行。
あの時どれだけの人が月末パパが死んでしまったと思っただろうか。
ここも、私はまんまと殺人犯という色眼鏡で観てしまっていたので、あ、死んじゃった、と思ってしまった。
月末パパ、骨折しただけでよかったね。
あとうらやましいぞ!!


田中泯さんの元ヤクザとクリーニング屋さん
口数はあまりなかったけれど、彼が出会ったクリーニング屋の女将さんがわかってくれる人で良かったパターン。
最初はあんなの誰しも邪魔者扱いしちゃう。し、見た目は怖い。
でも要領悪くてもきちんと仕事こなすし、害はない。それを見ているからこそ女将さんは何も知らない他人がこの人のことを怖がったりすることが気に障るわけで。

女将さんがきちんと自分の物差しで物事を測ることが出来る人で良かったと思う。
田中泯さんが刑務所出だと打ち明けた時、信じる疑うではなく、女将さんは自分の「感覚」を信じた人だった。
そして、田中泯さんはこの人がいるクリーニング屋さんに割り振られて「良かった」タイプの人だったのだろう。
きっと魚深で10年やっていける。
あと、田中泯さんの演技がすごかった。特に何もしてはいないのだけれど、特に何もしていないのに放たれる威圧感とか存在感、恐怖のようなもの。それがスクリーンを通してもわかる。
そりゃあクリーニング屋さんの売上も落ちるわと思う。
こういった存在だけで演技になる俳優さんは、日本にどれだけいるのだろうとも考えた。
出てくる受刑者の中では一番好ましかった。
最後海から上げられたのろろ様をバックに二人でインカメ写メするのほほえましかったね。


③理髪店の元受刑者店主と福元(水澤さん)
福元も、元受刑者店主が切り盛りする理髪店に務めることが出来て「良かった」人だ。
店主が「居場所があることが大切だ、重要だ」との旨を言っていたが、出所後生活していく上ではまずここが大変であり不安なのは、そういった経験が無い私でも容易く想像が出来る。
そんな状況で同じ境遇の店長に出会えた福元はラッキーだったのだが、おそらく酒を飲むと人が変わるのだろう。
一升瓶ラッパして暴れる福元を見て、私たち視聴者はどうしても「このひと殺人した人だからこんなんになるんだ…」と思ってしまう。
しかし、確か殺人に酒は関係なかった(と思う)(記憶違いかも)。
それなのに、やっぱりなんかおかしい・ヤバいなこの人…と見てしまう。
殺人犯だと知らない状態であのシーンを見たら、絶対違った感覚で福元を見ているはずだ。
殺人を犯した、というこの一点だけで(だけというのは語弊があるが)、人を見る目は変わる。それはもうきっと我々一般人にはあまりにも非現実的すぎて仕方がないことだろうとも思う。
だが、店主も元受刑者ということもあり、彼は福元を見捨てずに見限らずに、あの酒の場を経ても、何も言うこともなく店に出していた。
この店主が理解できる立場の人だったからこそ福元はラッキーだったが、もしそうじゃ無かったら、、と思うと、魚深市にまたひとつ死体が上がっていたかもしれない。
福元もまた、理髪店店主の元で、この町で生きていけるだろう。


④酒の席で暴れる福元を見て怯える市川実日子
彼女についてはよくわからなかった。
ただ、酒乱の夫を一升瓶で殴り殺した己を、またやってしまうのではないかと信じることが出来ず怯えていた。
彼女の殺人は、彼女の思うところではなかったのだろうと思う。だからといって殺してはいけないことなんてとうに分かりきっていて、それでもやってしまった自分が怖い…。
自分をまだ「疑っている」状況だった。
比較的彼女は平穏な生活を望む傾向にあるかと思うので、あのまま魚深でゆっくりと過ごしてほしいと思ったし、きっと平穏に過ごせる人だと思う。

庭に動物達を埋める場面だが、最初は骨の標本でも作るのかもしくはそういう趣味があるのか?と思ったのだが、どうやら芽を出そうとしていた(?)らしい。
映画のラストではしっかり芽も出て、それは残った受刑者たちの希望を表しており、それこそが羊の木になり得るのだろうと思う。



北村一輝
めちゃくちゃ北村一輝だったような気がした。
私が北村一輝見る時って基本「おっ、北村一輝だ!」と思って見てしまうが、今回もそうだった。
めちゃくちゃ北村一輝だったし、とてもいい北村一輝感があった。
役どころとしては、出所して魚深に来た殺人犯のうちで唯一再犯しそうな雰囲気をあからさまに出している、わかりやすく言うと新宿歌舞伎町とかミナミとかあたりにいそうなヤベーワルのにーちゃん。
刑務所では写真部だったらしく、カメラを構える姿は可愛かったし北村一輝の笑ったお顔って可愛いよね。

とまあそんな北村一輝は魚深の平和な雰囲気が気に入らない様子で、何か悪いことに手を染めそう。
結局のろろ祭の時に見抜いた元受刑者たちに声をかけたりしていたし、ふつうに再犯する感じだった。その意識はあったし刑務所で反省はおろか更生もしなかったタイプだった。
顔は北村一輝で可愛いんだけど、ウザかった。

彼についての深くは、次の松田龍平を語る際にまとめようと思う。


松田龍平
最後になるが松田龍平の宅配便業者、宮腰。
錦戸亮ちゃん演じる月末と「ともだち」になる受刑者。あとアヤの恋人にもなってた。
すなわち受刑者の中では一番近しい存在。
害はなさそうなありそうな。
彼だけは最初に出会った時に、自分からぺらぺらと自らの受刑理由を語っていた。過剰防衛で懲役一年半(だったかな)だという。
今思うと「殺人」に対して何の思いもないからそうペラっと言えるわけで。うん、なんかとにかく映画観たあとだとヤベーヤツなんだけど、月末の立場だとなんとなく人当たりもいいし、(私は年齢しらんけど)歳も近いし、楽器もやりはじめて楽しくしてそうだったし、、、
うーん、だから信じる、信じようとしてみちゃう気持ちもわかるかな。
優香の時と違うのは、彼が月末にとって「ともだち」にあたる存在として位置づけられたこと。
ここが、わりと大きいような気がする。

結局松田龍平は、そんな月末やアヤの気も知らず、平然と殺人を犯す。
面白いほど呆気なく殺すから、余計に怖かった。
無表情で、何を考えているかわからない様子で、殺す理由が「邪魔だから、ウザイから、頭にきたから」とか、なんかそんなくらいのことだと思うんだけど、それだけですぐに「何の感情もなく殺せてしまう人間がいる」ことが怖い。
それが自分の近くにいるかもしれないと考えると、まあ正直怖いよね。

北村一輝が彼に「何人殺したのか」と問う場面があったが、答えはなかった。
少年院に入ったのは一、二度程度であってほしいが、果たしてどうなのか。

宮腰が北村一輝を車で轢く際、一切の迷いも躊躇いもなかったのが怖かった。そのあと月末宅で「今日はちょっと疲れたから」といった理由で眠れるのも怖い。
そしてそれを演じる松田龍平はすごかった。
ふつうに、あ〜コイツこえーやつだ…と思ってしまうんだけど、その頃になると少し月末が入ってきて、それでももしかしたら松田龍平はやっていないんじゃないか…?とすら思えてくるところがスゴい。
三人殺したのを見ているのにも関わらずね。

結局宮腰は、のろろ様を「見ていた」よね。
月末は「見ないように」していた。
その土地の、今も残っている風習とか言い伝えって、ただの作り話かもしれないけれど私はなんだか怖いなと感じてしまうし、今回改めて怖いと感じた。

結局生贄にされたのは宮腰で、月末はのろろ様に「守られ」て、今後また平穏に過ごせるのだと思う。
のろろ様は守り神だと信じてきた月末が勝った。

やーしかし、宮腰が月末の手を引っ張って飛び降りたところはめちゃくちゃ緊張感があったなー!
すごくヒヤヒヤしたしドキドキした。
いい意味でも、わるい意味でも。

羊の木にいる羊は5匹。
北村一輝は死んで、宮腰も死んだわけだから、あと一人は?となると理髪店店主なのだろうか。




【エンディングについて】

エンディングのサビで繰り返される
Just remember that death is not the end
というワード。

覚えておきなよ、死が終わりじゃないことを
みたいな感じだと思うんだけど、ほんとにそう。

宮腰が死んで、それで町は平穏な日々を取り戻したかもしれないが、そもそもの問題である「過疎化」は解消されていないし、「極秘プロジェクト」もどうなったのかわからない。
また新たに受刑者が送り込まれる可能性だってあるし、いま残って居場所を見つけた元受刑者四人のことも、本当に信用していいのだろうか?と、私だったら思ってしまう。

それなのに月末は一件落着したような顔をして、日常を取り戻した「つもり」でいるように見えた。
人間の慣れとはまったく恐ろしいうえ愚かだが、そういった人を信じる愚かさ、人情が無ければ息苦しいのも確かである。
そして思い出した時に、今後も信じるのか疑うのかで頭を悩ませるのだろう。



【感想】

あらかた感想みたいなものは記したが、未だにどう感じ取るのが正解なのかがわからない。
映画好きの人が好むかんじの作品かなぁと思ったり。
観たあとの劇場の空気は、どんより、シーン、といった感じで、その雰囲気ああわかるな〜と。みんなたぶん終着地点が見えてないまま見終えてしまったんだろうな〜と思った。
もはや信じるのが正か、疑うのが正か、などといった話では無くなっている。
そして私は羊の木はこの一回限りで観るのは終わりにしたい。雰囲気が重たくて、今の気分だとそう思えてしまう。
優香さんも言ってたけど、これ体調面整えて見た方がいい。私は観るなら近くてもあと半年は空けたい。観るのしんどかった(笑)

でもほんとうに観て良かったなと思えた。
綿密かつ大胆な演技をする俳優陣に、くせのある監督、音楽パートはアヤが同じコードばっかり弾いてるのが気になったりしつつ、嫌な意味でのハラハラドキドキ、そしてこの主演を務めた錦戸亮ちゃん。
観ない理由は無い。
こうやって色々考えてみるきっかけにもなった。
いろんな気づきを得て久々にアウトプットする気にもなれたし、良かった。
うん、やっぱ一人で見て、一人で壁打ちしながら感想整理するのがいい映画かも。私はね!

そうだ!!錦戸亮ちゃんのチャリ乗る所作がとても好きだった!!!市民〜!ってかんじ!!
そして本当にふつうのひとの役だったな。
いないのは分かるけど、もしかしたらうちの区役所にも錦戸亮ちゃんみたいな役員いるんちゃうか?と思える感じ。ただ顔面が爆裂に可愛い。紙を手に受刑者待ってるところまじ激マブ。要チェケ。


ひとまず終わる。


20180205追記

錦戸亮主演、映画「羊の木」を観ました。

以下ネタバレ感想です。


映画羊の木、とにかく雰囲気が暗い。
率直な感想として、まず暗い。
もうずっと曇り。劇中晴れていようとも、なお曇りであるかのように感じるくらいには全編通してずっとどんよりした雰囲気。
しかしこれが「過疎化した地方の町」をよく表現している。さびれた港町。その煽り文に一切の偽りは無い。
また、こういった雰囲気は監督の色がよく出ているような気もしたりしなかったり。(本当によく分かってない)
そしてこの映画は、思ってた以上に明るく笑えたり観たあとにスッキリするような、そんな簡単な映画ではなかった。


と、前置きしてみたけれど、とりあえず観た感想第二弾としては、

「観てよかった!!!!」

この一言に尽きる。

これは本当に観てよかった!!!!!
ちなみに一人で観て良かったと思ったし、監督並びに錦戸亮ちゃんたちはお誘い合わせの上と仰ってはいたが、私はこれは一人で観に行くべき映画だなと思った。
(人によるからそこは各々調整した方がいい)



いろいろ感想は言いたいんだけど、まず言いたいい!!!
あのね!!
俳優陣が超絶スーパー色っぽい!!!!

個性的な俳優陣とそのキャラクターがとっても良かった!
そう、だから、取り敢えずその俳優陣とキャラクターにフォーカスを当てながらつらつら書いていこうと思う。



①まず優香!!
優香めちゃくちゃエロかった!!!
すごい、これはほんとに口から「エロ……」って思わず出ちゃいそうなくらいエロかった!!!
単純な女の色気だけじゃない。
序盤からまあ月末が優香のおっぱい凝視してしまうくらいの豊満さもあるけどそうじゃなくて!
月末パパの歯ブラシを手伝う時のおっぱいから行くところとか、口の端に付いたお米をとって食べちゃうところとか(カメラも舐めて撮っててずるかった)。
そこも本当に充分エロくてドキドキしたんだけど、ただエロいんじゃなくて、すごくしっとりとした女の色気が、色っぽさがすごく魅力的だった。生きてきて優香を見て初めてエロいなと思った。

「旦那を首絞めセックスで誤って殺してしまった」「女子刑務所の話」「好きな人と死ぬまで一緒にいたい」
こういった情報が加味されていく度に優香の魅力が倍増しになっていき、さらに艶っぽく色っぽく見えた。
特に首絞めセックスの行は、それで人を殺めてしまったという危うさと、月末に「死ぬまで人を好きになってはいけないのか」と問う真剣な眼差しが、どうしようもなく色っぽくて、思わず息を飲んだ。
しかし当事者の月末はそれどころではない。
なぜなら「故意では無いと言っているが、結果的に殺人犯」になってしまった人間が身内になるかもしれない状況だからだ。
経緯がどうあれ、人は殺してしまっている。
そんな人物に、そういったことを問われて、果たして自分ならどう返すだろうか。
月末は何も答えなかった。
きっと私も、すぐに答えは出せない。
なぜなら、信じてくださいと言われても、だってもう既に信じていないし、信じられるわけがないから。
しかし月末パパは優香から殺人の話を聞いても、それでも気持ちは揺らがなかった。
その意思を聞いた月末は、それなら、ということであとは当事者間に任せた。まあここまで来るといくら息子であろうとももう大人だし、介入しようとも思わない気持ちもわかる。

そして結果的に優香は魚深で生きていく希望が掴めた。
どうか今度は平穏に暮らしてほしいと思う。
こう思ってる時点で、今は優香の言ったことを「信じている」私がいる。裁判では信じてもらえなかったことを、何も見ていないのにね。

優香エロいの話から逸れたけど優香はエロい。
錦戸亮ちゃんがお昼の番組でAVやんと言ってしまった理由、観たらわかる(ほんまか?)。
絶対見て欲しい。

あと、月末宅で月末パパとのろろ様が来るから部屋に入ろうねの行。
あの時どれだけの人が月末パパが死んでしまったと思っただろうか。
ここも、私はまんまと殺人犯という色眼鏡で観てしまっていたので、あ、死んじゃった、と思ってしまった。
月末パパ、骨折しただけでよかったね。
あとうらやましいぞ!!


田中泯さんの元ヤクザとクリーニング屋さん
口数はあまりなかったけれど、彼が出会ったクリーニング屋の女将さんがわかってくれる人で良かったパターン。
最初はあんなの誰しも邪魔者扱いしちゃう。し、見た目は怖い。
でも要領悪くてもきちんと仕事こなすし、害はない。それを見ているからこそ女将さんは何も知らない他人がこの人のことを怖がったりすることが気に障るわけで。

女将さんがきちんと自分の物差しで物事を測ることが出来る人で良かったと思う。
田中泯さんが刑務所出だと打ち明けた時、信じる疑うではなく、女将さんは自分の「感覚」を信じた人だった。
そして、田中泯さんはこの人がいるクリーニング屋さんに割り振られて「良かった」タイプの人だったのだろう。
きっと魚深で10年やっていける。
あと、田中泯さんの演技がすごかった。特に何もしてはいないのだけれど、特に何もしていないのに放たれる威圧感とか存在感、恐怖のようなもの。それがスクリーンを通してもわかる。
そりゃあクリーニング屋さんの売上も落ちるわと思う。
こういった存在だけで演技になる俳優さんは、日本にどれだけいるのだろうとも考えた。
出てくる受刑者の中では一番好ましかった。
最後海から上げられたのろろ様をバックに二人でインカメ写メするのほほえましかったね。


③理髪店の元受刑者店主と福元(水澤さん)
福元も、元受刑者店主が切り盛りする理髪店に務めることが出来て「良かった」人だ。
店主が「居場所があることが大切だ、重要だ」との旨を言っていたが、出所後生活していく上ではまずここが大変であり不安なのは、そういった経験が無い私でも容易く想像が出来る。
そんな状況で同じ境遇の店長に出会えた福元はラッキーだったのだが、おそらく酒を飲むと人が変わるのだろう。
一升瓶ラッパして暴れる福元を見て、私たち視聴者はどうしても「このひと殺人した人だからこんなんになるんだ…」と思ってしまう。
しかし、確か殺人に酒は関係なかった(と思う)(記憶違いかも)。
それなのに、やっぱりなんかおかしい・ヤバいなこの人…と見てしまう。
殺人犯だと知らない状態であのシーンを見たら、絶対違った感覚で福元を見ているはずだ。
殺人を犯した、というこの一点だけで(だけというのは語弊があるが)、人を見る目は変わる。それはもうきっと我々一般人にはあまりにも非現実的すぎて仕方がないことだろうとも思う。
だが、店主も元受刑者ということもあり、彼は福元を見捨てずに見限らずに、あの酒の場を経ても、何も言うこともなく店に出していた。
この店主が理解できる立場の人だったからこそ福元はラッキーだったが、もしそうじゃ無かったら、、と思うと、魚深市にまたひとつ死体が上がっていたかもしれない。
福元もまた、理髪店店主の元で、この町で生きていけるだろう。


④酒の席で暴れる福元を見て怯える市川実日子
彼女についてはよくわからなかった。
ただ、酒乱の夫を一升瓶で殴り殺した己を、またやってしまうのではないかと信じることが出来ず怯えていた。
彼女の殺人は、彼女の思うところではなかったのだろうと思う。だからといって殺してはいけないことなんてとうに分かりきっていて、それでもやってしまった自分が怖い…。
自分をまだ「疑っている」状況だった。
比較的彼女は平穏な生活を望む傾向にあるかと思うので、あのまま魚深でゆっくりと過ごしてほしいと思ったし、きっと平穏に過ごせる人だと思う。

庭に動物達を埋める場面だが、最初は骨の標本でも作るのかもしくはそういう趣味があるのか?と思ったのだが、どうやら芽を出そうとしていた(?)らしい。
映画のラストではしっかり芽も出て、それは残った受刑者たちの希望を表しており、それこそが羊の木になり得るのだろうと思う。



北村一輝
めちゃくちゃ北村一輝だったような気がした。
私が北村一輝見る時って基本「おっ、北村一輝だ!」と思って見てしまうが、今回もそうだった。
めちゃくちゃ北村一輝だったし、とてもいい北村一輝感があった。
役どころとしては、出所して魚深に来た殺人犯のうちで唯一再犯しそうな雰囲気をあからさまに出している、わかりやすく言うと新宿歌舞伎町とかミナミとかあたりにいそうなヤベーワルのにーちゃん。
刑務所では写真部だったらしく、カメラを構える姿は可愛かったし北村一輝の笑ったお顔って可愛いよね。

とまあそんな北村一輝は魚深の平和な雰囲気が気に入らない様子で、何か悪いことに手を染めそう。
結局のろろ祭の時に見抜いた元受刑者たちに声をかけたりしていたし、ふつうに再犯する感じだった。その意識はあったし刑務所で反省はおろか更生もしなかったタイプだった。
顔は北村一輝で可愛いんだけど、ウザかった。

彼についての深くは、次の松田龍平を語る際にまとめようと思う。


松田龍平
最後になるが松田龍平の宅配便業者、宮腰。
錦戸亮ちゃん演じる月末と「ともだち」になる受刑者。あとアヤの恋人にもなってた。
すなわち受刑者の中では一番近しい存在。
害はなさそうなありそうな。
彼だけは最初に出会った時に、自分からぺらぺらと自らの受刑理由を語っていた。過剰防衛で懲役一年半(だったかな)だという。
今思うと「殺人」に対して何の思いもないからそうペラっと言えるわけで。うん、なんかとにかく映画観たあとだとヤベーヤツなんだけど、月末の立場だとなんとなく人当たりもいいし、(私は年齢しらんけど)歳も近いし、楽器もやりはじめて楽しくしてそうだったし、、、
うーん、だから信じる、信じようとしてみちゃう気持ちもわかるかな。
優香の時と違うのは、彼が月末にとって「ともだち」にあたる存在として位置づけられたこと。
ここが、わりと大きいような気がする。

結局松田龍平は、そんな月末やアヤの気も知らず、平然と殺人を犯す。
面白いほど呆気なく殺すから、余計に怖かった。
無表情で、何を考えているかわからない様子で、殺す理由が「邪魔だから、ウザイから、頭にきたから」とか、なんかそんなくらいのことだと思うんだけど、それだけですぐに「何の感情もなく殺せてしまう人間がいる」ことが怖い。
それが自分の近くにいるかもしれないと考えると、まあ正直怖いよね。

北村一輝が彼に「何人殺したのか」と問う場面があったが、答えはなかった。
少年院に入ったのは一、二度程度であってほしいが、果たしてどうなのか。

宮腰が北村一輝を車で轢く際、一切の迷いも躊躇いもなかったのが怖かった。そのあと月末宅で「今日はちょっと疲れたから」といった理由で眠れるのも怖い。
そしてそれを演じる松田龍平はすごかった。
ふつうに、あ〜コイツこえーやつだ…と思ってしまうんだけど、その頃になると少し月末が入ってきて、それでももしかしたら松田龍平はやっていないんじゃないか…?とすら思えてくるところがスゴい。
三人殺したのを見ているのにも関わらずね。

結局宮腰は、のろろ様を「見ていた」よね。
月末は「見ないように」していた。
その土地の、今も残っている風習とか言い伝えって、ただの作り話かもしれないけれど私はなんだか怖いなと感じてしまうし、今回改めて怖いと感じた。

結局生贄にされたのは宮腰で、月末はのろろ様に「守られ」て、今後また平穏に過ごせるのだと思う。
のろろ様は守り神だと信じてきた月末が勝った。

やーしかし、宮腰が月末の手を引っ張って飛び降りたところはめちゃくちゃ緊張感があったなー!
すごくヒヤヒヤしたしドキドキした。
いい意味でも、わるい意味でも。

羊の木にいる羊は5匹。
北村一輝は死んで、宮腰も死んだわけだから、あと一人は?となると理髪店店主なのだろうか。




【エンディングについて】

エンディングのサビで繰り返される
Just remember that death is not the end
というワード。

覚えておきなよ、死が終わりじゃないことを
みたいな感じだと思うんだけど、ほんとにそう。

宮腰が死んで、それで町は平穏な日々を取り戻したかもしれないが、そもそもの問題である「過疎化」は解消されていないし、「極秘プロジェクト」もどうなったのかわからない。
また新たに受刑者が送り込まれる可能性だってあるし、いま残って居場所を見つけた元受刑者四人のことも、本当に信用していいのだろうか?と、私だったら思ってしまう。

それなのに月末は一件落着したような顔をして、日常を取り戻した「つもり」でいるように見えた。
人間の慣れとはまったく恐ろしいうえ愚かだが、そういった人を信じる愚かさ、人情が無ければ息苦しいのも確かである。
そして思い出した時に、今後も信じるのか疑うのかで頭を悩ませるのだろう。



【感想】

あらかた感想みたいなものは記したが、未だにどう感じ取るのが正解なのかがわからない。
映画好きの人が好むかんじの作品かなぁと思ったり。
観たあとの劇場の空気は、どんより、シーン、といった感じで、その雰囲気ああわかるな〜と。みんなたぶん終着地点が見えてないまま見終えてしまったんだろうな〜と思った。
もはや信じるのが正か、疑うのが正か、などといった話では無くなっている。
そして私は羊の木はこの一回限りで観るのは終わりにしたい。雰囲気が重たくて、今の気分だとそう思えてしまう。
優香さんも言ってたけど、これ体調面整えて見た方がいい。私は観るなら近くてもあと半年は空けたい。観るのしんどかった(笑)

でもほんとうに観て良かったなと思えた。
綿密かつ大胆な演技をする俳優陣に、くせのある監督、音楽パートはアヤが同じコードばっかり弾いてるのが気になったりしつつ、嫌な意味でのハラハラドキドキ、そしてこの主演を務めた錦戸亮ちゃん。
観ない理由は無い。
こうやって色々考えてみるきっかけにもなった。
いろんな気づきを得て久々にアウトプットする気にもなれたし、良かった。
うん、やっぱ一人で見て、一人で壁打ちしながら感想整理するのがいい映画かも。私はね!

そうだ!!錦戸亮ちゃんのチャリ乗る所作がとても好きだった!!!市民〜!ってかんじ!!
そして本当にふつうのひとの役だったな。
いないのは分かるけど、もしかしたらうちの区役所にも錦戸亮ちゃんみたいな役員いるんちゃうか?と思える感じ。ただ顔面が爆裂に可愛い。紙を手に受刑者待ってるところまじ激マブ。要チェケ。


ひとまず終わる。


20180205
追記

普段我々は偏見を無くそうだとかそういった世界に身を置き、私個人としてもそういった目は持たないようにと意識している、わけではないが、まあみんなハッピーになる世界の方がいいので偏見というもの自体を考えないようにしている。(この時点でそういった意識を持ってしまっているのだなと思い知らされる)

この映画を見て考えたのは、犯罪者への偏見である。

殺人をした。
そういった人たちは、どうしても我々の目には異質に映ってしまう。
これは仕方の無いことなのだろうか。
その動機も理由も知らずに、『殺人を犯した』からという一点のみで他人を推し量れないのではないか。

学生時不勉強であった身でこういったことを言うのも気が引けるのだが、世間で殺人が起きたとして、その犯人はまあメディアでもなんでもだいたいは極悪人として報道される。そして我々の目にも、そのように映ってしまうのが世の常であるのは、間違いではないと言える。
そんな中、被疑者のことを考えたことがある人間は、どれだけいるのだろうか。
被害者の立場で考えるひとが多いのは仕方が無い。だってみんな、誰しも自分がまさか犯罪をしてしまうなんて思ってもみないことだろうから。しかしだからといって、一方的に被疑者を叩くことは、ケースバイケースではあるのだが、それは違うと私は常々思う。
そして人権というものは人間が等しくもつ権利であるので、当然罪を犯してしまった人にだって人権はあることを、我々は再認識すべきではないか。


身近にある犯罪と祭り上げられるものの事例として顕著なのが『チケット』に纏わるものだ。
私はこの事例において、若い女子が私利私欲の為ではあるといえ、簡単に犯罪を犯してしまえるシステム自体が好ましくない。チケットの高額転売や詐欺行為は、被害者がいる時点で許されるべきではないのだが、魔が差したからといって行ってしまった被疑者を叩く気にもなれない。
確かチケットの高額転売で書類送検されたという事例がつい最近にあったかと思う。
調べると懲役2年6ヶ月、執行猶予4年。
この判決自体は大きな進歩であると言えるが、執行猶予が4年もついているので、4年の間再犯・その他の違反や犯罪が無ければ懲役刑には至らない。つまり刑務所送りにはならない。しかし多くの人は、『チケット高額転売でムショ送り』と捉えているのではなかろうか。

実はこういった執行猶予中の人間は、わりと世間にいる。
ちなみに執行猶予中に結婚することだって可能だ。
だから、いわゆる犯罪者は本当に身近にいる可能性がある。(殺人はまた別なので懲役刑になるが、例外ももちろんある)(法の世界は例外だらけだ)
それを、もしカミングアウトされたとき、私はどう思ってしまうだろう。
当人の悲しみや感情を受け止められるのだろうか。馬鹿なことをしたと反省していればいいが、そういった人間だけとも限らない。私自身、まだ身近でそういった人間に出会ったことは無いが、今後無いとも言い切れない。
チケットの件だって、大事になって初めて事の重大さに気づいてから警察だったり裁判だったりがあるわけで、そのあと被疑者だった子の精神面がどうなっているのかなんて赤の他人である私には到底分からないが、わかろうとする気持ちだけは、いつでも持っていたいと思う。


何が書きたかったのかもはや分からなくなってきているが、ちょっとこういうことも考えてみて、文字で残しておきたかった。
あとなんか色々言っているが、自分の知識となるものは学生の自分に専攻していたとはいえ専門ではないので間違っている可能性もあるから(てか間違っていると思うから)詳しくは自分で調べて欲しい。
いわゆる勧善懲悪だけでは物事を計れないのだと、我々は再認識すべきであると考える。